1980年頃のダイカスト工場 レンチが飛ぶ世界
レンチが飛んできた!
レンチが飛んでくるのは、失敗したとき。湯ジワや焼き付きが出たときは、それほど怒られない。しかし、製品の一部が金型に食いついてしまったときは違う。
「ワーッ、取られた!」と叫ぶと、「何やってんだょ〜!」と怒号が飛び、パイプレンチやモンキーレンチが飛んでくる。とはいえ、投げる人も当たらないように投げるので、実際に体に当たったことはない。
金型に製品が食いつくと、1〜2時間かけて取り外し、ようやく鋳造を再開する。しかし、また同じことが起こる。
*実は、ゲートの部分が溶損し、アンダーカットになっていたのだ。
すると、レンチを投げた先輩が「こうやるんだよ〜」と言いながら、ハンドスプレーを手に取り離型剤を塗布してみせた。すると、なんとアンダーカットでも鋳造できてしまうではないか!
塗布方法のレクチャーを受け、改めて鋳造を再開するが、やはりまた食いついてしまう。
あれから45年——
今なら、アンダーカットでも抜く自信がある。